2017年10月アーカイブ


についての、今回も続きです。

「ザ・クオンツ」で、登場人物の一人が、オンラインポーカーのヘッジファンドを作ろうと考えたエピソードがありました。結局はあきらめたそうですが。
本書ではオンラインポーカーを自動でプレイするプログラム(bot、ロボット)を作った人のエピソードが出てきます。
運営者側はロボットが使われることを規制しようとします。
実際はかなりのロボットが稼働しているのではないか?と心配させられるような話でした。

マルコフ連鎖モンテカルロ法の歴史とギャンブルへの応用についても書かれています。
前にRのMCMCpackをいじったときに遭遇した「メトロポリス」というのは人の名前だったのかと、本書で知り、自分が不勉強なことを恥じ入った次第です。

以上、駆け足ではありますが、本書で印象が強かったことを、頭に思い浮かぶままに書き連ねました。
本書は読み物としても面白く、さらに、実際に自分でモデルを作りたい人は、本書で紹介された論文を手掛かりに、関連する他の論文を探すことができるでしょう。また、既にこの方面に詳しい人でも、知識の整理に役立つと思います。

なお、著者は数学的モデリングが専門で、大学で教鞭をとっているとのこと。

【著者( Adam Kucharski )ご尊顔】

英国の王立研究所での講演

Googleでの講演

についての記事の続きです。

目次を見ただけだと、何について書かれているかわからないと思います。
主として下記事項について、科学と数学がどのようにして攻略法を見出したかが紹介されています。

  • 競馬
  • ルーレット
  • 宝くじ
  • スポーツベッティング
    • アメリカンフットボール
    • サッカー
    • バスケットボール
    • 野球
  • カードゲーム
    • ブラックジャック
    • ポーカー
  • ボードゲーム
    • チェス
    • バックギャモン
    • チェッカーズ
  • クイズ番組(Jeopardy!)
  • 暗号解読
  • じゃんけん
特に競馬については、香港シンジケートの生い立ちが書かれています。
(香港シンジケートについては、「天才数学者はこう賭ける」にも少し出てきます)

1986年の論文を書いたBoltonとChapmanが結婚していたことはこの本で初めて知りました。
また、競馬のデータをコンピュータで処理させるのにパンチカードを使用していたことも、この本で知りました。論文を読み返すと、競馬新聞のデータを「assemble and code」するのに1レースにつき1時間掛かったということが書かれていました。作業時の光景が目に浮かぶようです。
1980年代前半だと、パーソナルコンピュータはまだ非力だったため、大学の計算センターの大型コンピュータを使ったのではないでしょうか?
ちなみに、ベースとなった離散選択理論の論文がダニエル・マクファデン(2000年のノーベル経済学賞を受賞)によって発表されたのが1974年。
日本でも、1980年代前半は、(パーソナルコンピュータではなく)大学のメインフレーム上でFORTRANのプログラムを動かし、離散選択モデルのパラメータ推定の計算をさせていたという記事を読んだ記憶があります。

ルーレットの攻略については、エドワード・ソープやドイン・ファーマーのエピソードが有名で、本書以外の本で読んだ人も多いと思います。
本書では、さらに、2004年にイギリスのリッツホテルのカジノが攻略されたエピソードが紹介されています。
やりすぎて、警察に通報されたとのこと。やはりカモフラージュは大事です。
現地では有名な事件だったようです。
下記のように、BBCなどの報道機関が記事にしています。


昨年出版されると同時に購入して読んでいたのですが、遅ればせながら記事にすることにしました。
購入を決めたきっかけは、索引を見ると

  • Benter, Bill
  • Bolton, Ruth
  • Chapman, Randall
  • Faemer, Doyne
  • Kelly, John
  • Thop, Edward
という名前が出ていたのと、競馬について書かれているのがわかったからです。
また、著者の職業からして、おかしなことは書かれていないだろうことが期待できたからです。

ギャンブルについて、非常にマニアックな内容です。
競馬以外のギャンブルも取り上げています。

おそらく翻訳が出ないと思っていました。
今年の11月に翻訳が出ると知り、ちょっと驚きました。

アダム・クチャルスキー著 草思社 2017年11月20日出版予定


下記のような本を既に読んでいて、面白いと思った人は、本書も楽しめるのではないでしょうか?


目次

Introduction
Chapter 1: The Three Degrees of Ignorance
Chapter 2: A Brute Force Business
Chapter 3: From Los Alamos to Monte Carlo
Chapter 4: Pundits with PhDs
Chapter 5: Rise of the Robots
Chapter 6: Life Consists of Bluffing
Chapter 7: The Model Opponent
Chapter 8: Beyond Card Counting
Acknowledgments
Notes
Index


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