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「The Perfect Bet: How Science and Math Are Taking the Luck Out of Gambling 」の翻訳版「完全無欠の賭け: 科学がギャンブルを征服する」が書店に並んでいたので、さっそく買い求めました。
内容以外には、以下のような点に、気がつきました。
まず、不満を感じた点。

  • 索引がないのは、勿体ない
  • 原注がない(草思社のウェッブサイトからPDFをダウンロードするようになっている)
  • 章題を、原文を翻訳したものではなく、翻訳者(編集者?)が内容を要約した、独自の章題にしている。例を挙げると、第3章の章題は、「ロスアラモスからモンテカルロへ」とでも訳すところが「競馬必勝法と水爆開発」。第8章は「カードカウンティングを超えて」が「ギャンブルの科学の新時代」など。他の章も同様。但し、これは好みが分かれるところだと思う。
次に、感心した点。

  • 章の1つ下のレベルの節ごとに、見出しが付けられている(原著には節の見出しはなかった)
  • 原著目次は章題だけだったが、日本語版目次には節の見出しが含まれていて、内容が把握しやすくなっている
  • 訳者あとがきで、日本の馬券裁判に触れている
日本語目次は下記のとおりです。
これを見て、興味を持たれた方もいるのではないでしょうか?

目次
  • 「ギャンブル必勝法」というものが持つ魅力
  • ギャンブル必勝法の研究が多くの科学を生んだ
  • ノーベル賞物理学者を驚かせたギャンブル必勝法
第1章 ルーレットは本当に予測不能か
  • ルーレットに確実な攻略法はあるか
  • ポアンカレの言う「三次の無知」とは何か
  • ルーレットは本当にランダムかを調べる
  • 予測可能なはずのものが予測不可能なものを生む
  • ルーレットの研究を始めた二人の天才
  • ルーレットの解明は秘密裏に進められた
  • ルーレット攻略のヒントを得た次世代研究者たち
  • 論文として発表されたルーレット攻略法
  • ルーレットを考える理論モデルの進化過程
第2章 宝くじの抜け穴につけ込む
  • 宝くじと実験と「制御されたランダム性」
  • 当たりくじを見つけ出す方法
  • 期待利益がプラスになる宝くじが存在する?
  • 宝くじ攻略の実際とその困難
  • 単純な「シラミ潰し」での宝くじ攻略
第3章 競馬必勝法と水爆開発
  • ブラックジャック必勝法誕生の経緯
  • ブラックジャック必勝法をカジノで実践する
  • 完全にシャッフルするのはじつは難しい
  • 競馬のベッティング市場は完全か
  • 競馬攻略の研究成果を発表した論文
  • 競馬予測モデルの作り方とはどのようなものか
  • 競馬予測研究の理想の地、香港
  • 競馬予測モデルをオッズを使って修正する
  • 香港での成功までの道のリ
  • 水爆を開発した数学者、ウラム
  • モンテカルロ法という解の探究法
  • より強力な、マルコフ連鎖モンテカルロ法の登場
  • 正しく予測できても儲けは賭け方次第
  • 科学的手法が競馬を金儲けの手段にした
第4章スポーツベッティングへの進出
  • 攻略法実践の場としてのオンラインカジノ
  • 試験問題から始まったサッカーの試合結果予測研究
  • サッカーの試合結果予測法の基本原理
  • スポーツベッティングに興味を抱く原子力研究所員
  • スポーツ統計学によるラスヴェガスヘの挑戦
  • 種目によリ予測のしやすさが異なる理由
  • 試合と同時進行で賭けられるブックメーカーの登場
  • 高額ベットを受けられるブックメーカーの秘訣
  • 新しい賭けの形式「ベッティングエクスチェンジ」
  • ベッティングエクスチェンジで「儲けの確定」
  • 科学的ベッティングはなぜ投資先として有望か
  • 科学的ベッティングをさらに改善するには
  • 選手の獲得や評価にも予測モデルが使われる
  • 本気で儲けるなら不人気種目に目をつけろ
第5章 ギャンブル市場をロボットが牛耳る?
  • 裁定取引=アービトラージとは何か
  • 全自動ベッティングで絶対負けない賭けをする
  • 誰にも知られず大口ベットをするためのポット
  • ベッティング市場を欠陥ボットが暴走
  • 金融市場にもあるボット取引の罠
  • ボット同士の相互作用が市場を狂わす
  • ボットたちが形成する生態系で市場は安定するか
  • 市場の生態系は規制で制御可能か
第6章 ゲーム理論でポーカー大会を制覇
  • 人間を打ち負かすポーカーボットの登場
  • 「やめたくてもやめられない」ナッシュ均衡とは何か
  • 「はったり」の重要さをゲーム理論で証明
  • ワールドシリーズオブポーカーのチャンピオン
  • ポーカーの最適戦略を研究し勝利した男
  • 最適戦略を求めるミニマックス問題
  • ゲーム理論の発明と拡張と実践
  • ポーカーボットに内在する意志決定規則の矛盾
  • 矛盾を回避できてもポットは強くなれない
  • ボット自身に戦略を学習させる「後悔最小化」
  • 予測に基づくボットが常勝できない理由
  • 最適戦略の探究とその実践での強さ
  • 複雑なゲームではゲーム理論は通用しない?
  • ゲームする機械の次の進化
第7章 ボットで人間に挑む
  • クイズに答えるコンピューター、ワトソン
  • ポーカーボットとチェスボットの課題の違い
  • チューリングの模倣ゲームと学習するコンピューター
  • 人工知能ポーカーマシンの原点
  • ニューラルネットワークに学習させるということ
  • 勝手に強くなって人間を驚かせるボットたち
  • 相手の弱みにつけ込むか、ゲーム理論に従うか
  • ポーカーでもコンピューターが人間を超えた?・
  • ゲームにおける「心理戦」の正体を探る
  • 人間のふりをしてポーカー・ウェブサイトに挑む
第8章 ギャンブルの科学の新時代
  • ポーカーの勝敗は運任せではないとする判例
  • 予測モデルの構築と因果関係の解明は別モノ
  • モデルが正しいとは限らない理由
  • ギャンブルの科学を教えるMITの講座
  • ギャンブルは科学者と科学を引きつけ続けている
  • 科学がギャンブルの常識と定石を覆した
謝辞
訳者あとがき

についての、今回も続きです。

「ザ・クオンツ」で、登場人物の一人が、オンラインポーカーのヘッジファンドを作ろうと考えたエピソードがありました。結局はあきらめたそうですが。
本書ではオンラインポーカーを自動でプレイするプログラム(bot、ロボット)を作った人のエピソードが出てきます。
運営者側はロボットが使われることを規制しようとします。
実際はかなりのロボットが稼働しているのではないか?と心配させられるような話でした。

マルコフ連鎖モンテカルロ法の歴史とギャンブルへの応用についても書かれています。
前にRのMCMCpackをいじったときに遭遇した「メトロポリス」というのは人の名前だったのかと、本書で知り、自分が不勉強なことを恥じ入った次第です。

以上、駆け足ではありますが、本書で印象が強かったことを、頭に思い浮かぶままに書き連ねました。
本書は読み物としても面白く、さらに、実際に自分でモデルを作りたい人は、本書で紹介された論文を手掛かりに、関連する他の論文を探すことができるでしょう。また、既にこの方面に詳しい人でも、知識の整理に役立つと思います。

なお、著者は数学的モデリングが専門で、大学で教鞭をとっているとのこと。

【著者( Adam Kucharski )ご尊顔】

英国の王立研究所での講演

Googleでの講演

についての記事の続きです。

目次を見ただけだと、何について書かれているかわからないと思います。
主として下記事項について、科学と数学がどのようにして攻略法を見出したかが紹介されています。

  • 競馬
  • ルーレット
  • 宝くじ
  • スポーツベッティング
    • アメリカンフットボール
    • サッカー
    • バスケットボール
    • 野球
  • カードゲーム
    • ブラックジャック
    • ポーカー
  • ボードゲーム
    • チェス
    • バックギャモン
    • チェッカーズ
  • クイズ番組(Jeopardy!)
  • 暗号解読
  • じゃんけん
特に競馬については、香港シンジケートの生い立ちが書かれています。
(香港シンジケートについては、「天才数学者はこう賭ける」にも少し出てきます)

1986年の論文を書いたBoltonとChapmanが結婚していたことはこの本で初めて知りました。
また、競馬のデータをコンピュータで処理させるのにパンチカードを使用していたことも、この本で知りました。論文を読み返すと、競馬新聞のデータを「assemble and code」するのに1レースにつき1時間掛かったということが書かれていました。作業時の光景が目に浮かぶようです。
1980年代前半だと、パーソナルコンピュータはまだ非力だったため、大学の計算センターの大型コンピュータを使ったのではないでしょうか?
ちなみに、ベースとなった離散選択理論の論文がダニエル・マクファデン(2000年のノーベル経済学賞を受賞)によって発表されたのが1974年。
日本でも、1980年代前半は、(パーソナルコンピュータではなく)大学のメインフレーム上でFORTRANのプログラムを動かし、離散選択モデルのパラメータ推定の計算をさせていたという記事を読んだ記憶があります。

ルーレットの攻略については、エドワード・ソープやドイン・ファーマーのエピソードが有名で、本書以外の本で読んだ人も多いと思います。
本書では、さらに、2004年にイギリスのリッツホテルのカジノが攻略されたエピソードが紹介されています。
やりすぎて、警察に通報されたとのこと。やはりカモフラージュは大事です。
現地では有名な事件だったようです。
下記のように、BBCなどの報道機関が記事にしています。


昨年出版されると同時に購入して読んでいたのですが、遅ればせながら記事にすることにしました。
購入を決めたきっかけは、索引を見ると

  • Benter, Bill
  • Bolton, Ruth
  • Chapman, Randall
  • Faemer, Doyne
  • Kelly, John
  • Thop, Edward
という名前が出ていたのと、競馬について書かれているのがわかったからです。
また、著者の職業からして、おかしなことは書かれていないだろうことが期待できたからです。

ギャンブルについて、非常にマニアックな内容です。
競馬以外のギャンブルも取り上げています。

おそらく翻訳が出ないと思っていました。
今年の11月に翻訳が出ると知り、ちょっと驚きました。

アダム・クチャルスキー著 草思社 2017年11月20日出版予定


下記のような本を既に読んでいて、面白いと思った人は、本書も楽しめるのではないでしょうか?


目次

Introduction
Chapter 1: The Three Degrees of Ignorance
Chapter 2: A Brute Force Business
Chapter 3: From Los Alamos to Monte Carlo
Chapter 4: Pundits with PhDs
Chapter 5: Rise of the Robots
Chapter 6: Life Consists of Bluffing
Chapter 7: The Model Opponent
Chapter 8: Beyond Card Counting
Acknowledgments
Notes
Index


著者は2012年に開催されたWSOP(ワールドシリーズオブポーカー)で、ポット・リミット・オマハ・シックス・ハンデッド部門で優勝した人。

目次
プロローグ
  1. みずから競争に参加する
  2. 強くなれる場に飛び込む
  3. スタートの環境は厳選する
  4. 成長に繋がるのは真剣な時間だけ
  5. 短期間で可能な限りの経験値を積む
  6. 点検して試行錯誤する
  7. 高い集中力を身につける
  8. 強者を観察して真似る
  9. 変化こそ人間の能力だ
  10. 情報からノイズを排除する
  11. 勝ってる時こそやり方を変える
  12. 不完全情報ゲームに「神」はいない
  13. 淡々と「期待値」で動く
  14. 運がきた時に勝ち切るために
  15. 感情にかられれば負ける
  16. 初めてのWSOP
  17. WSOP2012
  18. DAY2、オールイン8連勝!
  19. WSOP2012で日本人初の優勝!
エピローグ

非常に面白く読むことができました。

私が注目したのは、次の2点です。

  • どのようにして木原氏がプロとしてのレベルに達したのか?
  • プロポーカープレイヤーとして、オンラインと実際のカジノでどのようにプレイしているか?

本の前半は、木原氏が、自分の体験から

  1. そろばん
  2. 将棋
  3. 麻雀
  4. バックギャモン
  5. ポーカー
などの習い事やゲームに、いかにして上達したかが書かれており、大いに啓発されました。

特に、木原氏がポーカーで強くなるために、オンラインのポーカーで腕を磨いたことには、私がポーカー事情に詳しくないこともあり、目からウロコが落ちました。インターネットが普及しだした1995年頃にもオンラインカジノはありました。
しかしながら、正直に運営されているか、あまり信頼していなかったので、オンラインポーカーについても関心が薄かったからです。
インターネット利用者が増えたきっかけは、Windows 95の発売だと理解しています。
TCP/IPが付いてきたからです。
「インターネットの死角」(結城史郎 著)という小説が翌年の春に出版され、その中に日本人がオンラインカジノを経営するというエピソードが出ていました。

将棋の羽生善治が七冠に挑んだのが同じ年の1996年。
NHKで放送されたドキュメンタリー番組がありました。その中で最も印象に残っているのが、両者の勉強風景の違いでした。
羽生氏はパソコン画面に将棋盤を表示させ、棋譜を呼び出し、次々と表示画面を変化(前に戻ったり、先に進めたり)させていました。一方、中原氏は実際の将棋盤にコマを並べ、棋譜を見ながら、コマを動かしていたのでした。
(これは、羽生氏の方が中原氏に比べ、10倍速で将棋の勉強をしているのではないか?)と、当時非常な衝撃を持って映像に見入りました。

その後も、羽生氏と梅田望夫氏との対談を読み、「高速道路の先は大渋滞」という言葉を知りました。
すなわち、パソコンやネットを活用することで、時間と費用の面で、はるかに効率的に将棋の習得ができてしまう。その半面、ある一定のレベルに到達した人の数が増え、そこから先の競争が激化しているということ。

「高速道路」については、「運と実力の間」の木原氏の本でも、「4.成長に繋がるのは真剣な時間だけ」の「若い人は強い」や「頭脳ゲームを席巻するネット出身者」という節で
  • オンラインポーカーで腕を磨いた、過去4回のWSOPで優勝した21歳、23歳、23歳、24歳のプレイヤーたち
  • ネット碁で強くなった囲碁の井上裕太本因坊
  • 2011年の大和証券杯ネット将棋・最強戦で優勝した菅井竜也四段(当時)
  • 東風戦で強くなった麻雀の小倉孝プロ
の例が紹介されていました。

また、「大渋滞」については、ポーカーの世界でも真実のようです。
「高速道路とけものみち」などの章で繰り返し指摘されていました。

The Quants」の中には、面白いエピソードが沢山あるのですが、特に気に入ったエピソードを幾つか紹介します。

Peter Mullerという人物が出てきます。
彼の話は「市場リスク 暴落は必然か」( 日経BP社 / リチャード・ブックステーバー著)にも少し出てきます。
※「ミュラー」という名前で登場。実際は「マラー」と発音するのが正しいようです。

モルガン・スタンレーでは世界中の市場を分析し、トレードをするロボットを開発。
自動化をしすぎてしまったため、やることがなくなり、モルガンに籍を置いたまま、自分探しの旅に出たり、ストリートミュージシャンになったり、音楽CDを出したりと、非常に変わった人です。

▼Peter Muller のウェッブサイト

5人の中では最もポーカーに熱中しているようです。
インターネットの普及によって、オンラインポーカーの利用者が激増したことから、Peter Muller 氏はオンラインポーカーを対象市場としたヘッジファンドを立ち上げようと、一時は考えたとのこと。

これは突飛なアイデアのようでもありますが、「フィル・ゴードンのポーカー攻略法 入門編」(パンローリング)に出ているエピソードとして、オンラインポーカーでは、

  • カジノのテーブルで行われるポーカーに比べ、ゲームの消化が早い
  • 同時に複数のテーブルでプレイできる
  • カモ(初心者)が多数いる
などの理由により、強いプレイヤーは今まで以上に稼げるようになったとのこと。

ポーカー用のロボットを開発したり、人件費の安い国でポーカーの才能がある若者を発掘し、軍資金を与えれば、ポーカー・ヘッジファンドも単なる空想ではないような気がします。
約10ヶ月ぶりの再開です。
トレードとポーカーについて記事を何本か書こうと思います。

  • The Quants: How a New Breed of Math Whizzes Conquered Wall Street and Nearly Destroyed It
という本が2010年の2月に出ました。
翻訳が出るのが待ちきれず、アマゾンで入手。

クオンツ代表として、下記の5人が出てきます。

  1. Peter Muller (モルガン・スタンレーの社内ヘッジファンド)
  2. Ken Griffin (シタデル)
  3. Jim Simons (ルネッサンス・テクノロジー)
  4. Cliff Asness (AQR)
  5. Boaz Weinstein (ドイツ・バンクの社内ヘッジファンド)
いかにして、ヘッジファンドを立ち上げるに至ったか、サブプライムショックとリーマンショックの前後で彼らの明暗がどう分かれたか、について豊富なエピソードを交え、紹介しています。

また、彼らと関係があった人物として次のような人物が登場します。

  1. エド・ソープ (「ディーラーをやっつけろ!」)
  2. ドアン・ファーマ (「マネーゲームの予言者」)
  3. アーロン・ブラウン (「ギャンブルトレーダー」)
  4. ベノワ・マンデルブロ(「禁断の市場-フラクタルでみるリスクとリターン」)
  5. ビル・グロス(「発想の大転換―21世紀に向けての投資運用」、「債券王ビル・グロース 常勝の投資哲学」)

ポーカーとのかかわりですが、成功したクオンツは仲間(ライバル)同士でプレイすることを好むようです。

▼チャリティを目的としたポーカー大会

主催者のメンツが豪華です。

※2010年8月29日、加筆しました。

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